ama-yadori

寝転がりながら面白いと思ったことを考える

【ネタバレ】パッセンジャー感想・考察

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画像:公式サイト

パッセンジャー

あらすじ

惑星移住のために地球を出発した豪華客船アヴァロン号。
乗客5000人は、到着予定の120年後まで冬眠するはずでした。
ところが残り90年のところで、2人の男女が目覚めてしまいます。
主人公のジムはエコノミークラスの乗客で、オーロラはゴールドクラスの乗客。
本来出会わないふたりは、絶望的な状況の中で力を合わせながら、 少しずつ惹かれ合っていくのですが…。

以下、がっつりネタバレしながら感想と考察を書いて行きます。

感想・考察

夢とリアルのテクノロジー

アヴァロン号の船内のシステムは、現代人がイメージする「未来」をそのまま表した夢の世界です。
レベルの高いAI、精密なホスピタリティと安全性能、美しく無駄のないデザイン。
しかし、そんな中でもAIの未学習領域が垣間見えたり、上手くないUI・UXがあったりと、完璧ではないところが妙なリアリティを醸し出しています。
また「故障するわけがない」と結論づけてしまうところも(もしかしたら乗客向けのインフォメーションとしてそう言っているのかもしれないですが)、どことなく氷山とぶつかった豪華客船の時代から変わっていない悪い習慣を思わせます。でも夢があってわくわくすっぞ。楽しいだろうなあ。

人間の社会性は3人以上から。

ひとりぼっちのジム。悩むのをやめ、悠々自適を通り越してどんどん動物的になっていくのは映画館でも笑いが起きました(服も着なくなって最早ほぼ尻)。
しかしオーロラに出会ってからあっという間にヒゲを剃り服を気にする元の姿に元通り。
よかったね、と思いきや男女になったら男女になったでもう自堕落で滅茶苦茶な堕落モードに。
最終的に、乗組員ガスの登場でやっと社会性が成り立ったような印象がありました(きっと人間社会は最低3人はいないとダメなんでしょうね)。
ガスが最後に正装して宇宙の見える場所で死んでいくシーン、死の儀式や弔いは、高度な社会性を表します。彼は3人の中で最も社会的な人物でした。

ジムの用意した指輪

パンフレットには、貴金属店の指輪と書いてありましたが、たぶんあれはジムの手作りなんだろうなと思います。
貴金属のワイヤーが入った箱が出てきたのと、指輪が細い糸を編んだデザイン。
あれだけ豪華なものが沢山ある中で、あえての手作り、なんとも夢があります。

作品のモチーフについて

旧約聖書天地創造

作品を見て、ベースに旧約聖書があるように思いました。
インフラが出来上がった無人の宇宙船は、旧約聖書の創世記5日目の世界(動物以外が出来上がっている世界)と似ていました。
旧約聖書では、神は自分に似せた形の人間を作ります。最初にアダム、次にアダムからイブ。
宇宙船の神はテクノロジーであり、その中でも人間の姿をしたバーテンダーのアーサーは神の形を分かりやすく表した存在です。

神としてのアーサー

アーサーはあらゆる場面で人間のふたりに神の立場で接しています。
冒頭、ジムが覚醒して世界を歩き回るようになった時点で彼はすでにそこに存在していて、店を守り、世界を把握しています。
ジムが苦しめばバーテンダーらしく紳士に振る舞い、救います。
ところが、すっかり浮ついたジムとオーロラの仲を引き裂く鉄槌を下すのも彼でした。
それは人工知能の限界が招いた悲劇なのですが、ジムがアーサーを自分と同じ人間だと思い込んでしまったことが原因です。
アーサーにそんなつもりは一切ないのですが(彼はとても健気で、ステキなエピソードと思っただけ)、結果的に罰を与えてしまいました。
そして崩壊する宇宙船の中、制御を失って店を滅茶苦茶に破壊するアーサー。
ジムとオーロラがふたりがかりで止めに入る中、容赦なくガラスを叩き割るアーサーの姿に、ふたりは荒ぶる神を見るのです。

繰り返すアダムとイブの物語

エンディングの88年後、ふたりがもういない世界に残るのは楽園でした。
選択肢のある中、人間はひとりよりふたりを選び、鉄よりも木や草に囲まれることを快適と捉えます。
どんなにテクノロジーが進化しても起源は失われない、そんなこと感じました。

まとめ

あまり予備知識もなく観に行ったのですが、非常に面白かったです。
ベタですが「自分ならどうする?」と考えるとかなり様々な考え方があったりするので、
観た人と議論するのも楽しい映画だなと思いました。